第67回 モーニングコーヒー?!
ポコッポコッとコーヒーが落ちる音。だんだんと強く明確に、現実のものになっていくアロマ。
寝返りをうつと、かすかに見える知らない風景・・・んっ?ここどこ???体を起こそうとした瞬間、
「うっイタッ!」頭がガンガンする。
「おはよう!やっと起きたね。」見覚えのある顔、だけど、朝から見る顔じゃない。
何で、マスターがここにいるの?っていうか、何で私がここにいるの?
見たことのない風景。明らかに、私の家ではない!
あわてて布団の中を見る。Tシャツは着ている。だけど、ジーンズが見当たらない。
「えっ!!まさか・・・」と、つぶやいた声がマスターに聞こえたのか、
笑いをこらえながら「コーヒー飲む?」と、聞いてきた。 「とりあえず、お水・・・ちょうだい。」
苦笑い?とも見える笑顔で、水が入ったグラスを差し出しながら、
「何もしてないよ。レイに手を出すほど、オレも困っていないから。
だけど、夕べは猛獣相手に大変だったよ。さすがに、オレん家に運び入れるのが精一杯だった。」
「えっ!あんたの家、うちより遠いじゃん。」
「あぁ、先月引っ越したんだよ。やっと店から近い部屋が空いてさ・・・ここ、歩いて3分くらい。」
ゴクゴクと喉を鳴らして一気に水を飲み干す。やっと、この状況が理解できた。
「まぁ、シャワーでも浴びて、顔洗ったら・・・ぷっぷっぷ。」
「何笑ってんの?」
「自分の顔、見てみろよ。」
げっ!パンダ?たぬき?ただでさえ化粧がドロドロに落ちて恐ろしい顔なのに、目がはれて、もう妖怪状態になっている。
「だって、化粧水とかないじゃん。」
「あっ、そこらへんのてきとーに使ってよ。」って、指した方を見ると明らかに女性用の化粧品一式。
「はぁ~ん、彼女のね。じゃ、遠慮なく借りるよ。」
熱いシャワーを浴びて頭が動きだすと、昨晩のことが少しずつ、よみがえってきた。
濡れた髪をバスタオルで拭きながら椅子に座って、コーヒーをすすり、目の前のマスターを見ていると、何ともいえない感情が押し寄せてきて、思わず口からでた。「私、あんたに負けたんだ・・・」
memo
何でも一生懸命、強くたくましく…でもどこか弱い…。
40才を目前に、女の幸せって?きれいな人って言われるには?などと日々奮闘するレイちゃん。もしかしたら、あなたの近くにレイちゃんがいるかも…。